細胞内アダプター分子として知られるGene 33/RALTは、EGF受容体を含むErbBファミリーと結合し、下流のシグナル伝達経路を抑制することが報告されている。心筋細胞において、このGene33の遺伝子発現は、血管作動性ペプチドや酸化ストレス刺激によって急速に誘導されることが知られている。しかしながら、心筋細胞内で発現増強されたGene33の役割は、ほとんど明らかにされていない。本研究において申請者は、ラット心筋由来のmyoblastsであるH9c2細胞株から、Gene33安定発現細胞株(G33sc)を樹立し、Gene33がHB-EGFを介したシグナル伝達系を抑制することを明らかにした。 HB-EGFは心筋酸化ストレスによって誘導され、EGF受容体を介した心肥大シグナル伝達に重要な役割を果たすことが知られている。H9c2細胞を、HB-EGFで刺激すると、すみやかにEGF受容体の活性化を介したAkt/PKBやErk1/2等のMAPKの活性化が認められ、さらに下流のEgr-1の遺伝子・蛋白発現の誘導が観察された。対照的にG33sc細胞においては、これらMAPKの活性化やEgr-1の発現が抑制されていた。興味深いことに、H9c2細胞においてはHB-EGF刺激によって、HB-EGF自身の遺伝子発現も誘導された(auto-induction)が、G33sc細胞ではHB-EGF遺伝子発現の誘導は認められなかった。さらに、Egr-1に対するsiRNAをH9c2細胞へ導入し、この遺伝子発現を抑制するとHB-EGFのauto-inductionが観察されなくなることから、この経路にはEgr-1の発現誘導が関与していることを示した。以上の結果から、Gene33はHB-EGFによるEgr-1の発現誘導を抑制し、HB-EGFよるauto-inductionを制御することを示唆した。
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