研究概要 |
本研究の目的は、血管におけるジアシルグリセロールキナーゼ(DGK)によるtransient receptor potential(TRP)チャネルの調節機構を解明することである。平成21年度は血管壁構成細胞のうち、血管内皮細胞に着目した研究を行った。ラット大動脈から単離した血管内皮細胞におけるDGKアイソザイムのmRNA発現をRT-PCR法により解析した。その結果、主にDGKα,γ,ζのmRNA発現が検出された。これらアイソザイムの細胞内局在を特異抗体を用いて免疫細胞化学的に解析したところ、DGKαは核内および細胞質にひまん性に、ζは核内に顆粒状に免疫陽性反応が検出された。一方DGKγは核周部の細胞質に筒状および網状の免疫陽性反応として検出され、ゴルジ体マーカーであるGM130抗体と二重染色を行った結果、ゴルジ体に局在することが明らかとなった。血管内皮細胞をIL-1βで刺激するとDGKγのmRNA発現は亢進し、この充進はp38MAPキナーゼインヒビター、SB203580により抑制されることが明らかとなった。 本研究では血管平滑筋細胞においてDGKγと同様にIL-1βにより発現に誘導がかかるcyclooxygenase-2の挙動を明らかにし、DGKとの関連の可能性を考えた。これらの結果はDGKアイソザイムの血管内皮細胞および平滑筋細胞における機能的役割を示唆するものであり、DGKによるTRPチャネルの制御機構を解明する上で重要なデータであると考える。
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