本研究は、レーザーマイクロダイセクション法(LMD法)を用いて、高血圧性肥大心の心筋細胞、血管構成細胞、血管周囲浸潤細胞を選択的に分別採取し、各組織別に遺伝子解析を加え比較検討することにより、心筋肥大、心筋線維化、血管リモデリング、炎症細胞浸潤などのメカニズムを細胞群ごとに明らかにし、それらの相互関係を解明することによって、根本的な高血圧性臓器障害の治療法を開発することを目標にしたものである。 まず、LMD法の手技を確立することより研究を開始した。LMD法を行う前準備としてのラット心臓の凍結ブロック作成法・薄切法・染色法、またLMD法により組織回収後にはRNA抽出方法・cDNA合成法などそれぞれについていくつかの方法を試み、最終的には回収できたRNA濃度やreal time PCR法により細胞特異的遺伝子発現を確認することで、LMD法確立を確認した。これにより、LMD法を用いることにより心筋構成細胞群ごとの遺伝子解析が可能となった。 平行して、脳卒中易発症高血圧自然発症ラット(SHR-SP)と正常血圧ラット(WKY)を飼育し、血圧正常期の3週令から、高血圧性臓器障害期の24週令までの血圧・体重測定、心エコー図にて左室肥大・左室機能測定し生理学的パラメータを収集、SHR-SPについては死亡したラットについては死因確認、生存曲線の作成を行つた。24週令で屠殺時は、血液・尿を含め各臓器を採取し、後に行う免疫・組織学的評価や分子生物学的評価などの目的に応じて臓器サンプルを保存し、現在それらの解析を行っている。
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