核内受容体ファミリーの1つであるperoxisome prolieferator-activated receptors(PPARs)は、細胞の増殖・分化や細胞死制御に重要な役割を担うリガンド依存的転写因子である。PPARは最近の研究から癌の増殖や進展にも深く関与することが明らかにされており、新たな癌治療の標的分子として期待されている。一方、血管新生因子であるvascular endothelial growth factorの受容体(VEGFR)は癌細胞においても過剰発現しており、VEGF/VEGFRのautocrine loopは腫瘍の血管形成や転移など悪性化の過程にも関与することが報告されている。本申請課題では、PPARを介したVEGF/VEGFRの肺癌における発現調節機構とPPAR-VEGFIVEGFRシグナル伝達経路を標的とした肺癌治療への応用について検討し、そのメカニズムを明らかにすることを目的とした。本年度には、ヒト肺癌細胞PC-14(腺癌)及びRERF(扁平上皮癌)を用いて、PPAgamma ligandによりVEGFの発現に及ぼす影響を検討した。用いた2種類の細胞がPPARgammaを発現していることをRT-PCRで確認した。また、この2種類の細胞ともPPARgamma ligdである、troglitazone及びciglitazoneで用量依存性に細胞増殖が抑制されたことから、確かにPPARgamma ligandが作用していることが確認された。Real-timePCRでは、これらの細胞で、troglitazone及びciglitazoneは用量依存性にVEGE-AmRNAの発現を亢進させることが明らかになった。Western blotによりVEGFの蛋白量も増加することが明らかにできた。更に、このVEGFの遺伝子発現亢進メカニズムを明らかにしようと試みている。VEGFめ発現亢進メカニズムにHIF-I alphaを介した経路が重要である場合があるので、PPARgamma ligandによるHIF-1alpha発現に及ぼす影響を調べた。Real-timePCRではtroglitazoneによってPC14細胞のHIF-lalpha発現が有意に亢進した。以上の成績はPPARgamma ligandによるPPARgamma活性化は肺癌細胞のVEGF発現をHIF-lalpha依存性に亢進させることを示唆する。現在更に、VEGF発現亢進メカニズムの詳細を検討中である。
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