研究概要 |
進行期非小細胞肺癌42例を検討し、腫瘍組織にて上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性であった16例を本研究の対象とした。1)臨床情報の集積。EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)投与前の血清と血漿を収集した。EGFR-TKI治療効果は部分奏効13例、不変2例、判定不能1例であった。2)血中DNAの抽出。DNA回収量は血清のほうが多かった(平均値;血清130.4ng/5mL,血漿24.8ng/5mL)。3)EGFR遺伝子変異の解析。抽出された血中DNAからダイレクトシークエンス法とScorpion ARMS法を用いてEGFR遺伝子変異の検出を行った。ダイレクトシークエンス法よりもScorpion ARMS法の方が、また血清よりも血漿を用いたほうが検出率は高かった(Scorpion ARMS法の検出率;血漿8/16,血清5/16)。4)Whole genome amplification(WGA)を用いた検討。検出感度を高めるために血漿DNAを用いてWGAを加えることの意義を検討した。WGAを加えたほうが、検出率は上昇した(検出率;WGAあり6/16, なし8/16)。5)獲得耐性に関わる2次変異の検出。血液は容易に繰り返し採取できる点から、2次変異の出現をモニタリングする役割が期待できる。EGFR-TKI治療経過中に8週ごとに血漿を回収し、EGFR-TKIに獲得耐性を示すEGFRのExon 20の変異(T790M)の検出を行う研究を実施した。4例のみ解析が進んでいるが、現在のところT790M変異は検出されていない。 これまでに得られた結果は、米国癌学会など癌関連学会にて報告した。課題としては、当初の計画と比べて症例数の集積が不十分であったことと、当初の目的達成のためにはさらに高感度の検出系の確立が必要と考えている。
|