研究概要 |
2008年度までの調査で黄砂飛散時に喘息患者の10%~20%,COPD患者の5%~10%で呼吸器症状が増悪することを確認した.黄砂飛散はスギ,ヒノキ花粉飛散と時期が重なることも多い.花粉飛散がない黄砂飛散期,スギ・ヒノキ花粉飛散を伴う黄砂飛散期,スギ花粉の大量飛散期における喘息患者の症状調査を行なった.また,黄砂飛散期の鼻症状についてJRQLQを用いて調査した.2009年3月には黄砂飛散時にスギ花粉の飛散を認めた.この際,呼吸器,眼,鼻症状のいずれかの増悪を認めた例は113例中34例であり,このうち23例(20%)で呼吸器症状が増悪していた.一方,スギ花粉の大量飛散期には13例(11%)で呼吸器,眼,鼻症状のいずれかの症状増悪があったが,呼吸器症状が増悪した例は4例(4%)であった.2009年12月に黄砂が飛散した際には花粉の飛散はなく,この際に呼吸器症状が増悪した例は104例のうち13例(12.5%)であった.2007年の調査でも黄砂とスギ花粉が同時に飛散した際の呼吸器症状増悪率は21%であったのに対して,黄砂のみの飛散では15%であった.この結果,黄砂のみの飛散時にも喘息患者で呼吸器症状は増悪するが花粉大量飛散が同時にあった場合にはより呼吸器症状が増悪しやすかった.PEFモニタリングにおいてもスギ花粉の飛散のみでは非飛散時に有意な変化は認めないが,黄砂飛散期にはMin%Maxが非飛散期に比較して有意に低下していた.一方,JRQLQにより鼻症状のQOL調査を行ったが黄砂飛散期と非飛散期で有意な差は認めなかった.以上の結果より,黄砂の飛散時には喘息患者の10%~20%で呼吸器症状が増悪するが,スギ花粉をはじめ花粉の大量飛散が伴うとより増悪しやすいと考えられた.
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