研究概要 |
過敏性肺臓炎(Hypersensitivity Pneumonitis, HP)はI型アレルギーとは異なる機序、すなわち、III型とIV型アレルギーによって起きる疾患と考えられているが、その理由としてTh1型CD4細胞が主体となり病態の増悪が進む炎症であることが挙げられる。他のモデルマウスによるデータから炎症早期にGalectin-9(Ga1-9)による抑制機序の存在が示唆されていたが現在まで不明な点が多く残されていた。本研究ではGal-9による早期の炎症抑制機構の解析を目的とし検討を行った。本採択期間中の成果としてマウス実験的HPモデル(Experimental HP, EHP)において主にCD11b^+Gr-1^+骨髄由来抑制性細胞(Myeloid-derived suppressor cell,MDSC)による抑制誘導作用を明らかにした。近年、MDSCはLy-6G陽性の顆粒球系とLy-6C陽性の単球系とに分類されることが知られていることからさらに解析したところ、Ly-6c陽性(単球系)細胞であることが判明した。in vitroにおいてEHPモデルで使用した抗原(T. asahii)とGal-9を組み合わせて骨髄幹細胞(c-kit陽性細胞)を刺激した結果、双方の共存下でのみ強くCD11b^+Ly-6C^<hi>細胞が誘導されたため、表現型としてMDscである可能性が示唆された。当細胞について、続く細胞単離実験で機能解析を行ったところ、T細胞増殖抑制活性を有したことから機能的にもMDSCであることが明らかとなった。さらにマクロファージに対するGal-9の作用としてFcγレセプターの発現制御を明らかにし、当該作用によるIII型アレルギー疾患モデルである抗コラーゲン抗体誘導関節炎の抑制作用も明らかにした。興味深いことにこれらのMDSC分化誘導とFcγレセプター発現変化は相関しないことがわかった。すなわち、Gal-9は抑制性単球系細胞の分化と常在マクロファージへのFcγレセプター発現制御の2つの作用を有することが明らかとなった。本研究の目標であったGal-9誘導MDSCによる炎症抑制機序解明を本採択期間中に達成でき、一連の研究成果は筆頭著者として論文発表を行った(European Journal of Immunology, 2010,Feb.40(2),p,548-558,査読有,Clinical Immunology, 2009,Nov.133,p.382-392,査読有)。
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