研究概要 |
呼吸器は外界に開放されていることから、常に感染微生物への暴露を受けており、生体防御の最前線に位置する器官である。肺コレクチンはコラーゲン様の構造を有するC型レクチンであり、呼吸器の生体防御において重要な役割を果たしている。本研究では、非定型抗酸菌やレジオネラ菌といった細胞内寄生細菌に対する肺コレクチンの生体防御機構を明らかにすることを目的として研究を行なった。 肺コレクチンはレジオネラ菌体にCa^<2+>依存的に結合した。また、肺コレクチン存在下ではマクロファージによるンジオネラ菌の貪食が促進されることが明らかとなった。レジオネラ菌はマクロファージにより貪食された後も、ファゴソームとリソソームの融合を阻害することで消化を逃れ細胞内に寄生する。肺コレクチン存在下で貪食されたレジオネラ菌の細胞内増殖を解析したところ、貪食された菌体数は増加しているにも関わらず、1, 2, 3, 4日後に細胞内に存在する菌体数はコントロール群と比べ有意に減少していた。肺コレクチン存在下で貪食されたレジオネラ菌は、リソソームのマーカー蛋白質であるLAMP-1と共局在する割合がコントロール群と比べ増加していることから、肺コレクチンはレジオネラ菌を取り込んだファゴソームとリソソームとの融合を促進することで、レジオネラ菌の細胞内増殖を抑制していると考えられる。以上の結果は、肺コレクチンがレジオネラ菌感染の初期過程において重要な生体防御機能を担っていることを示しており、今後、臨床応用に向けたさらなる研究を展開していく予定である。
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