研究課題
平成20年度の検討より、タバコ抽出液(CSE)やタバコ成分のうちアルデヒド化合物であるアクロレインによって、マクロファージ(RAW264.7細胞)のアクチン骨格に異常がおき、大腸菌の貪食能の低下を引き起こしている事が分かった。そのため、本年度は、細胞内代謝、レドックスバランス、シグナルを中心に検討を行った。キャピラリー電気泳動-質量分析装置(CE-MS)を用いたメタボローム解析より、CSEやアクロレインは、細胞内代謝流速(flux)を解糖系からペントースリン酸回路にシフトさせ、ヌクレオチド生成も亢進させていた。またNADPH産生の上昇やグルタチオンの低下が認められた。さらに、NADPHオキシダーゼの複合酵素系の一つであるp47-phoxの局在部位の検討を行ったところ、CSEの添加によりp47-phoxの膜への移行の亢進が認められた。またH_2DCF-DA probeを用いた細胞内過酸化物の測定を行なった結果、細胞内の活性酸素種の亢進も認められた。次に細胞内シグナル伝達の検討を行ったところ、Akt、Src、NF-κBのリン酸化の亢進が認められた。そのため、CSEやアクロレインは、Akt、Src、NF-κBなどの細胞内シグナル伝達経路を活性化させ、また細胞内糖代謝応答に異常を引き起こす事で、細胞内レドックッスバランスを崩壊させ、白血球の機能や生存を制御している可能性が示唆された。また細胞内fluxのペントースリン酸回路へのシフトにより生じるヌクレオチド生成の亢進から、糖ヌクレオチド、糖タンパク質、糖鎖生成に着目した。その結果、RAW264.7細胞を用いた糖ヌクレオチドの解析の行った結果、CSEやアクロレインの添加により、糖ヌクレオチドの産生の亢進が認められた。今後、糖代謝調節解析に基づき、糖代謝から糖タンパク質合成まで統合的にCOPDの病因解析を行なう予定である。
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