本研究では、既に申請者らのグループが構築した肺炎球菌によるマウス重症化肺炎モデルを用いて、1)肺炎球菌およびその莢膜型に関わる疾患感受性遺伝子を特定し、2)重症化機序に関わる責任遺伝子(群)の役割を解析する。本年度は、連鎖解析を中心に責任遺伝子の特定を目標に以下の項目を実施し、いくつかの重要な知見を得た。 連鎖解析に用いる交配マウス種の決定 : 疾患感受性マウス(CBAIJ)と比較してPhenotype、Genotypeが明らかに異なり、かつ解析に必要となるマーカーの種類が多いC57BL/ 6マウスを連鎖解析に使用するマウス種として選別した。 F1、F2マウスを用いた肺炎球菌感受性試験 : CBAIJとC57BL/6マウスの交配により得られたF1マウス(16匹)およびこれらのインタークロスであるF2マウス(250匹)を用いて感染実験を実施し、肺炎球菌感受性・抵抗性の存在比(60 : 190)から、本疾患は単一遺伝子によるものである可能性が非常に高いことを見出した。 連鎖解析の実施 : 60匹の肺炎球菌感受性であったF2マウスのゲノムDNAを用いて連鎖解析を実施し、第1染色体上の約6cMの領域内に責任遺伝子が存在する可能性を見出した。 DNAマイクロアレイを用いた発現解析 : 肺炎球菌感染および非感染マウス(CBA/J)の肺より得られたRNAを用いて、DNAマイクロアレイを用いた発現解析を実施した。発現変動の高い遺伝子について、上記連鎖解析により絞り込まれた範囲内に存在する遺伝子との比較を行ったが、責任遺伝子の特定には至らなかった。
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