前年度の解析ではSmad3結合蛋白であるPin1がEGFシグナルによるSmadリンカー領域のリン酸化特異的にSmadに結合し、Smurf2によるユビキチン化・分解の促進をすることを見出し論文として報告した。平成21年度はこうして関与が示唆されたEGFとTGF-β両シグナルについて以下の解析を計画した。 1:肺癌細胞におけるEGFシグナル異常がTGF-βシグナルに及ぼす影響とその機序 多くの肺癌細胞ではEGFシグナルの下流分子の一つRASに活性型の変異が入ることが知られている。こうした肺癌細胞ではTGF-β刺激をすることにより上皮間葉転換(EMT)を起こすことが知られている。 肺線維症を背景として肺癌細胞の置かれる状況を考慮し、ある炎症性のサイトカインの存在下に肺癌細胞のTGF-βによるEMTなどの応答について調べたところ、TGF-βの作用が変化することが観察された。この変化とRAS変異との関係が今後の検討課題と考えられる。 2:線維芽細胞におけるEGFシグナルがTGF-βシグナルの作用に及ぼす影響とその機序 線維芽細胞を用いて、TGF-βシグナル調節性の蛋白ユビキチン化酵素Arkadiaによる炎症性疾患に関わる基質蛋白の制御について予備的な検討を行った。
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