研究概要 |
〈方法〉申請者らはクリオグロブリン血症患者由来のIgM mRF産生ハイブリドーマ細胞をヌードマウス腹腔内に注入し、貯留した腹水よりクリオグロブリン活性陽性のIgMを抽出した。また、健常者ボランティアの血清HiTrap ProteinG(GE healthcare)を用いてIgGを精製した。次に、7週齢の雄及び8週齢の野生株Balb/cマウスをそれぞれ2例ずつにこれらの免疫グロブリンを投与した。Cryo IgMは3日間連続(DayO, 1, 2)で1.2mgずつ尾静脈より静脈注射により投与した。IgGはDayOからDay2の間にTotal 1.74〜10.8mgを腹腔投与し、Day3もしくはDay7に組織の評価を行った。実験に用いたマウスは代謝ゲージ内で飼育され、連日蓄尿を行い、Albuwell M kit (Exocell Inc Philadelphia USA)を用いてCryo IgMおよびIgGを投与した後の尿アルブミン濃度の経過を評価した。 〈結果〉4例中3例でday2-3をピークに尿中アルブミンの増加が認められたが、尿中アルブミン濃度についてはばらつきが多かった。これは、ELISAが安定していないことが一因と考えられた。次に、腎組織の評価を行った。HE染色およびPAS染色を行い、マウスの腎組織を評価した。いずれのマウスも子宮体内には軽度の管内性増殖が認められた。また、メサンギウム細胞の軽度増殖が認められた。しかしながら、いずれの変化も軽度なものであり、さらに条件設定を行う必要があると考えられた 〈考察〉平成20年度の研究の結果より、Cryo IgMおよび野生株IgGの投与方法および投与量について確立した。これらの投与により軽微ではあるが、糸球体において管内性増殖およびメサンギウム増殖が認められ、ヒトのクリオグロブリン血症の際に認められる膜性増殖性腎炎に近い組織像が得られた。しかしながら、組織の変化は軽微であり、さらなる条件設定が必要と考えられた。平成20年度の研究により、クリオグロブリン血症性糸球体腎炎のモデルマウス樹立の基礎ができたと考えられる。
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