研究概要 |
<方法>昨年度,申請者らはヌードマウス腹腔内にIgMモノクローナルRF産生ハイブリドーマ細胞を注入し貯留した腹水から得られたクリオグロブリン活性をもつIgM(Cryo IgM)を用いて,野生型Balb/cマウスにクリオグロブリン血症性糸球体腎炎の誘発を試みた。しかし、PAS染色ではごく微細な管内増殖変化しか認めなかった.そのため本年度はより典型的な腎炎を再現するため投与方法を変更した. まず腎炎発症に寄与すると思われる炎症サイトカイン(IL-1, TNFα, IL-6など)が亢進した状態であるIL-1レセプターアンタゴニストノックアウトBalb/cマウスを用い,Cryo IgMを0.2-0.45mgずつ静脈投与,ヒト野生型IgG総量0.4-1.0mgを腹腔投与し、Day3-7に組織の評価を行った。 次に抗体量を増やして野生型Balb/cマウスに投与した.Cryo IgMを5mg静脈注射し,ヒト野生型IgGを2.5mg腹腔内投与した.また抗ヒトIgG, IgM抗体を用いた蛍光染色法にてクリオIgM及びヒト野生型IgGのマウス糸球体への沈着を観察した. <結果>投与したCryo IgM及びヒトIgGは少量投与群では沈着は微弱であったが、大量投与群ではマウス糸球体に強く沈着しているのが認められた.しかし野生型Balb/cマウス及びIL-1レセプターアンタゴニストノックアウトBalb/cマウスのいずれにも糸球体腎炎の所見は認めなかった. <考察>我々が現在用いているCryo IgMでは典型的なクリオグロブリン血症性腎炎を誘発する事はできなかった.しかし、Cryo IgMを投与した群のみIgGおよびIgMが沈着しており、この所見はCryo IgMがクリオグロブリン血症性腎炎におけるクリオグロブリンの糸球体の沈着に必要であることを示唆する所見であるかもしれない。
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