Tumor necrosis factor α(TNFα)の細胞内信号伝達は、TNF receptor(TNFR)1とTNFR2という2種の受容体を介するが、腎病変の進行においてそれらの伝達系がいかなる制御を受けているかは明らかではない。本研究は、TNFR1を介するTNFαの信号伝達因子TRADDが、腎線維化モデルである片側尿管結紮(unilateral ureteral obstruction ; UUO)ラットの腎障害進行においていかなる細胞内制御を受けているかに関し、TRADDのユビキチン依存性蛋白分解制御について検討し、以下の知見を得た。 1. UUO腎ではTNFα、TNFR1、TNFR2、TRADDのmRNAは、経時的に増加した。しかし、それらの蛋白レベルでは、TNFR2蛋白は増加するが、TNFR1蛋白は軽度減少し、TRADD蛋白はmRNA増加にもかかわらずUUO1日後より有意に減少した。 2. UUO腎ではTRADDの分解亢進(degradation assay)とユビキチン化の亢進(ubiquitin assay)が認められ、このTRADD分解はプロテアソーム阻害剤により抑制された。 3. HEK293細胞においてTRADDがユビキチン化されることがin vitroでも確認された。 4. TNFα阻害剤エタネルセプトの投与は、UUO腎障害を軽減し、TRADDの分解を抑制した。 以上より、UUO腎の尿細管間質障害進行に関与するTNFαの細胞内信号伝達では、TNFR1を介するTNFαの信号伝達因子TRADDがユビキチン依存性プロテアソーム蛋白分解制御を受けることでUUO1日後より減少していることが明らかになった。このUUO腎におけるTRADDの減少は、その腎障害進行においてTNFαの信号をTNFR2を介した信号伝達系優位に働かせている可能性が示唆された。
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