腎臓は尿管芽の周りに後腎間葉と呼ばれる前駆細胞集団が凝集し、糸球体、近位尿細管、遠位尿細管へと分化していくことで形成される。しかしこの間葉は生後速やかに分化して消失してしまう。この間葉を増幅させ、特定の細胞腫へと分化させることは腎臓再生にむけて大きな意味を持つ。そこで遺伝子導入によって間葉の未分化維持および分化誘導を引き起こせないかと考え、レンチウィルスを用いた強制発現系の開発を行った。 コントロールレンチウィルスベクターを使った結果、MOI 5で解離した腎臓前駆細胞の約80%が感染することを突き止めた。また予備実験の結果から解離した後腎間葉にWt1遺伝子を発現するウィルスを感染させると、下流で働くとされるVEGFの発現が誘導されること、また尿管芽の引き寄せに関わるGDNF遺伝子を発現するウィルスをE11.5胚の腎臓に感染させると、過剰な尿管芽の分岐誘導が観察された。これらからレンチウィルスベクターを用いた強制発現系は腎臓に有効である可能性が示唆された。現在、糸球体細胞への分化誘導因子候補11種と未分化維持因子候補2種のウィルス作製を行っており、コロニーアッセイまたは器官培養系での効果を検証したい。
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