本研究は運動ニューロンの進行性変性を特徴とする筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態解明と治療法開発をめざし、ニューロン以外の細胞群も含めた細胞外微小環境における微小血管とニューロン/グリア細胞のつながりに注目する中で、とりわけALS病態における微小血管新生の役割を明らかにすることを目的とした。 発症前から時間をおってALSラットモデルを解析すると、正常ラットに比較してALSラットモデル脊髄では、運動ニューロン変性が生じる病変部位・脊髄前角においてアストログリア増生、前角細胞脱落が有意かつ進行性に認められた。このような病態進行のもとALSラットモデルでは新生微小血管内皮細胞の有意な増加を示した(p<0.05)。しかし、発症後期ではその程度が減じるとともに内皮細胞マーカー陽性面積が有意に減少していた。これら新生微少血管内皮細胞には同時にnestinなどの未成熟細胞マーカーの共局在が確認された。 本研究により、ALSラットモデル病態下では微小血管系の再構築が生じていることが示された。運動ニューロンが変性し続ける進行期において血管内皮細胞新生が促進していたことから、運動ニューロン変性と関連した微小血管系の障害とそれに対抗する内在性の微少血管新生という可能性が示唆される。今後、本モデル脊髄における運動ニューロン保護を念頭に、微小血管新生の役割をさらに明らかにするため、血管新生促進あるいは抑制因子を用いた介入研究が重要と考えられる。
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