研究概要 |
本研究では、筋萎縮性側索硬化症などの病的な中枢神経系におけるSema4Dの役割を明らかにすることを目的としている。筋萎縮性側索硬化症には炎症機転が関与することが、近年明らかになってきているが、本年度は中枢神経系における炎症のエフェクター細胞であるミクログリアに対するSema4Dの活性とそのメカニズムを解析した。 1. Sema4Dは免疫系においてB細胞や樹状細胞のCD40シグナルを強め、免疫制御に関係することが知られているがミクログリアに対する活性は不明である。培養ミクログリアにCD40刺激抗体及びインターフェロンγとともにリコンビナントSema4Dを添加したところ、inducible nitric oxide synthase(iNOS)の発現が著明に増加し、Sema4Dは中枢神経系の炎症機転を促進する可能性が示唆された。 2. Sema4Dは免疫系ではCD72, 神経系ではPlexin-B1を受容体としていることが知られているが、ミクログリアにおけるSema4Dの受容体は明らかになっていない。野生型マウス、CD72欠損マウスおよびPlexin-B1欠損マウスからミクログリアを調整し、リコンビナントSema4Dで刺激したところ、CD72欠損マウス由来のミクログリアでは野生型と同程度にiNOSが増加したが、Plexin-B1欠損マウス由来のミクログリアにおいて増加は有意に低下しており、ミクログリアにおけるSema4Dの作用はPlexin-B1を介することが明らかになった。
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