ポリグルタミン(PolyQ)病は、原因蛋白質内のPolyQ鎖の異常伸長により発症する遺伝性神経変性疾患の総称で、異常伸長PolyQ鎖を持つ変異蛋白質がミスフォールディングを生じ、細胞レベル・個体レベルで様々な機能異常を来たすことで、神経症状を引き起こすと考えられている。個体レベルでの神経機能障害は可逆的であるため、障害を是正することで症状の改善が期待されるが、その分子メカニズムについては、これまで未解明である。本研究では、 PolyQ病モデルショウジョウバエを用いたゲノムワイドな遺伝学的スクリーニングにより、 PolyQ病の可逆性神経機能障害に関わる遺伝子を同定してその分子メカニズムを解明し、神経症状に対する治療標的を特定することを目的としており、今年度は以下の成果を得た。 異常伸長PolyQ蛋白質を薬剤(RU486)誘導性に神経系に発現して神経機能障害による可逆性運動障害・寿命短縮を来たすPolyQ病モデルショウジョウバエGS-ExPolyQ Flyと、様々な染色体部分欠失を持つショウジョウバエ変異体ライブラリーDef Fly (224系統)との遺伝学的交配を行なった。そして、次世代のショウジョウバエ(GS-ExPolyQ/Def Fly)の寿命を測定し、寿命短縮が改善される11系統を同定した。さらに2次スクリーニングとして遺伝子変異体ショウジョウバエを用いた実験を行い、11領域のうちの1領域内から可逆性神経機能障害に関わる遺伝子Sup1を同定した。今後、PolyQ病モデルショウジョウバエ及びマウスの病態におけるSup1の機能・局在の変化を解析し、Sup1の治療標的分子としての可能性を調べる。さらに1次スクリーニングから同定した残りの領域について2次スクリーニングを進め、GS-ExPolyQ Flyの神経機能障害の責任遺伝子を同定する。
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