遺伝性神経変性疾患であるポリグルタミン(PolyQ)病では、遺伝子異常の結果生じる異常伸長PolyQ鎖を持つ蛋白質がミスフォールディングを起こし、細胞レベル・個体レベルで様々な機能異常を来たすことで、神経症状を引き起こすと考えられている。個体レベルでの神経機能障害は可逆的であるため、障害を是正することで症状の改善が期待されるが、その分子メカニズムについては、これまで未解明である。本研究では、PolyQ病モデルショウジョウバエを用いたゲノムワイドな遺伝学的スクリーニングにより、PolyQ病の可逆性神経機能障害に関わる遺伝子を同定することを目的としている。前年度の研究から可逆性神経機能障害に関わる遺伝子が存在する候補染色体領域を11領域同定することに成功し、さらにそのうち1領域から候補遺伝子としてSup1遺伝子を同定することに成功した。 今年度は、昨年度に続いて、異常伸長PolyQ蛋白質を発現することで神経機能障害による可逆性運動障害・寿命短縮を来たすGS-ExPolyQ Flyを用いた遺伝学的スクリーニングを行い、新たに神経機能障害候補遺伝子としてsup5遺伝子を同定した。さらにsupl、sup5に対するRNAiを発現するショウジョウバエを作成し、これらの遺伝子の神経系でのノックダウンがGS-ExPolyQ Flyの寿命短縮を抑制することを明らかにした。 今後1次スクリーニングから同定した残りの領域についてさらに2次スクリーニングを進め、神経機能障害の責任遺伝子を次々と同定しその分子メカニズムを明らかにすることによって、新たな治療法の開発につながることが期待される。
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