研究概要 |
書痙患者に対する低頻度反復経頭蓋磁気刺激を用いた治療は、機序が解明されていないこともあり、未だ最適な刺激条件の確立には至っていない。そこで,本研究は、治療に適した磁気刺激の刺激条件および作用機序の解明を目的とし,書痙患者および健常者を対象とし、位相(monophasic,biphasic)と頻度(0.2Hz,0.8Hz、1Hz)の異なる組み合わせによる磁気刺激およびsham刺激を運動前野に250回与え、刺激前後での体性感覚誘発電位(SEPs),皮質脳血流および臨床評価の記録を進めてきた。これまでの2年間の成果として,biphasicよりもmonophasicが、1Hzよりも0.2Hzの磁気刺激がより高い治療効果をもたらす可能性および磁気刺激の作用が健常者と書痙患者では異なる様相を示す可能性を示す結果が得られてきたが,その機序については十分な検討を行うことができていなかった.本年度は,研究最終年度として成果をまとめる時期ではあったが,機序解明が不十分であったことから,その点について追求をすべく磁気刺激前後にSEPsを頭皮上32カ所から記録し,mappingによる分析を行った.その結果,健常者に見られる磁気刺激後のN30,N60成分の増加,書痙患者に見られるN60成分の減少はすべて前頭部の成分だけで生じており,他の部位での同期的な成分変化が生じている可能性は低いようであった.書痙患者で磁気刺激後に血流変化の見られる前頭部の活動変化が間接的にN60成分の少なくとも前頭部に投射する発生源領域に与える影響が治療機序に何らかの関係を持つ可能性が考えられた.データの追求により,年度内での公表が間に合わなかったことから,現在これら一連の成果をまとめ,英文雑誌での公表を急いでいる.
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