パーキンは常染色体劣性若年性パーキンソニズムの原因遺伝子として発見された。我々はこの転写産物はミトコンドリアに存在し、ミトコンドリア遺伝子の転写・複製を促進すること、細胞のアポトーシスを抑制することを見出した。パーキン蛋白自体にはミトコンドリアへの移行シグナルは存在しないことから、パーキンに結合する未知の蛋白がパーキンをミトコンドリアへ運搬する可能性が強く示唆された。我々はこの未知の蛋白を探索し、新規な遺伝子Kl-42(Klokin 1)と命名した。我々はKlokin 1はchondroitin polemerizing factor(CHPF)のsplicing variantであり、CHPFはもう一つのsplicing variantであるCHPF^Δ996とともにパーキンを糖化する作用があることを見出した。本研究では、さらに我々の見出した遺伝子の転写産物がミトコンドリア障害とどのような関連を有するのかを検討した。 培養細胞系へのKl-42(Klokin 1)の導入 : 種々の培養細胞系にKl-42を過剰発現させ、ミトコンドリア膜電位、細胞内局在の変化を解析する。さらに培養細胞にミトコンドリアトキシンであるMPTPあるいはロテノンを添加し、これらのパラメータがどのように変化するかを検討した。Annexin V/PIを用いたフローサイトメトリー(FACS)法によりアポトーシスに対する影響を検討した結果、Klokin 1およびChPFの導入ではアポトーシスは抑制され、この効果はMPTPあるいはロテノンを添加した細胞で著明であった。以上の結果から、Klokin 1ファミリーが抗アポトーシス作用を有することが示唆された。
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