研究概要 |
多発性硬化症 (MS) は, 自己抗原反応性T細胞が何らかの機序で活性化され,髄鞘形成に関わるミエリン蛋白であるmyelln basic protein (MBP), myelin ohgodendrocyte glycoproIein (MOG), myelin proteolipld protein (PLP) などに対して自己免疫反応を起こし, 脱髄を惹起する炎症性脱髄性疾患である. 近年, 視神経および脊髄に病変を主とする脱髄性疾患であるnyuromyelitis optica (NMO) に, 水チャネルであるアクアポリン4 (AQP4) に対する抗体が発見された. さらに, アジア人で多い視神経脊髄型MS (OSMS) でも同様に, 抗AQP4抗体が高率に認められた. しかし, 視神経および脊髄が病変の主体であるにも関わらず, 抗AQP4抗体が陰性の症例も存在し, 両者の同異性が議論されている. 本研究は, 抗AQP4抗体陰性の視神経脊髄炎における新規自己抗原の解析を目的に, その臨床病態およびT細胞系の検討を行ない, 新たな特異的抗原の発見を目的とするものである. 現在までに我々は, 神経系の主要な臨床症状である慢性頭痛について検討し, 抗AQP4抗体陰性症例は, 抗AQP4抗体陰性症例と比較し, 前兆のある片頭痛が有意に少なく, 臨床症状に差異があることを報告した. さらに補体系の検討では, 抗AQp4抗体陽性症例及び抗AQp4抗体陰性症例との比較において, 抗AQp4抗体陰性OSMSでは, 抗AQp4抗体陽性症例ほど再発期の血清補体値上昇を認めないが, 抗AQP4抗体陰性MSよりも上昇を認める症例が多く, 両者の中間的な性格をもつことを報告した. 現在我々は, 抗AQP4抗体陽性および陰性症例の末梢血単核球細胞および脳脊髄液を用い, スーパー抗原で刺激し, IFN-γ, IL-4, IL-17をcytokine secretion assay法およびflow cytometry法を用いて分析し, 各々の主要産生細胞であるヘルパーT1細胞, ヘルパーT2細胞, ヘルパーT17細胞のTh細胞動態を確認中である. 現在までに健康コントロールで施行, 上記分析法による適切なサイトカイン産生を確認したところである. 今後さらに, MBP, MOGなどの髄鞘蛋白を抗原として暴露し, そのTh細胞動態に与える影響を, 各々の症例群ごとに比較することにより, 特異的自己抗原に反応するT細胞系の検出を試みる予定である.
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