研究概要 |
慢性に発症・進展したり、再発・寛解を繰り返したりする、難治姓の免疫性ニューロパチーとして、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)、IgMMタンパクを伴うニューロパチーなどが含まれる。後者の標的分子として、myelin-associated glycoplotein(MAG)/sulphated gluculonyl paragloboside(SGPG)、GD1bをはじめとするb系列ガングリオシドが同定されているが、多くの場合不明である。有効な治療方法も開発されていない。したがって、発症機序を分子レベルで解明し、その知見に基づいた新規治療法の開発が強く求められている。 IgMMタンパクが認識するMAG/SGPG、GD1b以外の新規の分子を探索した。抗糖脂質抗体検索を依頼されたIgMMタンパクを伴うニューロパチー患者血清46例を対象とした。ELISAで、IgM抗GDlb、抗SGPG抗体を測定した。ヒト脳を抗原とし、ウェスタンブロットでIgMが認識するタンパク質を探索した。抗GDlb抗体は5例、抗SGPG抗体は30例で陽性であった。抗SGPG抗体陽性例中18例が、抗MAG抗体も陽性であった。抗GDlb、抗SGPG抗体陰性13例のうち4例で、40kDaのバンドが検出できた。慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー、多発性硬化症では各々50例中1例のみ陽性、急性運動軸索性ニューロパチー,急性失症性脱髄性多発ニューロパチー,重症筋無力症,健常対照では各々50例中陽性例はなかった。IgMMタンパクを伴うニューロパチーと各疾患群および健常対照群との間で抗体価に有意差が認められた。(P<(0001(Kluska1-Wallisテスト))IgMMタンパクが認識する、MAG以外のタンパク質を発見した。IgMMタンパクを伴うニューロパチーに特異的な自己抗体の標的分子であることが示唆された。
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