研究概要 |
慢性に発症・進展したり,再発・寛解を繰り返したりする,難治性の免疫性ニコーロパチーとして,慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP),IgM Mタンパクを伴うニューロパチーなどが含まれる.後者の標的分子として,myelin-associated glycoprotein(MAG)/sulphated glucuronyl paragloboside(SGPG),GD1bをはじめとするb系列ガングリオシドが同定されているが,多くの場合不明である,有効な治療方法も開発されていない.したがって,発症機序を分子レベルで解明し,その知見に基づいた新規治療法の開発が強く求められている. IgM Mタンパクが認識するMAG/SGPG,GD1b以外の新規の分子を探索した.抗糖脂質抗体検索を依頼されたIgM Mタンパクを伴うニューロパチー患者血清46例を対象とした.抗GD1b,抗SGPG抗体陰性13例のうち4例で,40kDaのバンドが検出できた.IgM Mタンパクを伴うニューロパチーと各疾患群および健常対照群との間で抗体陽性率に有意差が認められた.(p<0.001(Kruskal-Wallisテスト))IgM Mタンパクが認識する,MAG以外のタンパク質を発見した.IgM Mタンパクを伴うニューロパチーに特異的な自己抗体の標的分子であることが示唆された. N-グリカネース処理を行い,ウェスタンブロットで自己抗体の反応性の有無を検討した.Nグリコシド結合型糖鎖を有さないタンパク質であることが確認された.ウェスタンブロットでは,タンパクXは細胞質画分に多く存在すると考えられた.等電点電気泳動後にSDS電気泳動を行い,PVDF膜に転写し,銀染色を行った.脱色後にウェスタンブロットを行い,各々のスポットを対比させ,タンパクXのスポットに相当する部位をゲルより切り出した.質量分析でタンパクXの同定を試みたが,患者血清がウェスタンブロットで認識しないタンパク(GEAP)が同定された.非還元系のSDS電気泳動を行なったあと,患者血清を用いてウェスタンブロットを行なったが,XのバンドはGFAPのバンドに重なっていた.GEAPを発現していないヒト末梢神経よりタンパクを抽出し,ウェスタンブロットを行ったが,患者血清は反応しなかった.ラット末梢神経でも同様の結果が得られた.
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