本研究の目的は遺伝性痙性対麻痺(hereditary spastic paraplegia : HSP)の家系サンプルを用いてその原因遺伝子を同定することである。今回我々は優性遺伝形式を示す家系について、独自に開発した新規手法と公共データベースによる遺伝子発現情報を併用し、その原因遺伝子の同定を目指す。 本年は計画に基き、継続的なサンプルの収集、原因遺伝子の探索を中心に研究を進めた。当初の予定に従い、3世代分のDNAを発症者・非発症を含めて10例を目指した。遺伝を調べる上で強力なサンプルであり、協力の可能性を考えていた発端者の母親についてはプロジェクト開始直前にお亡くなりになられたため、協力を得ることは出来なかった。合計8名からの協力が得られたが、さらに他の親戚の発症者について収集は継続していく。原因遺伝子の探索を行なうにあたり、ゲノムワイドの型データを元に原因遺伝子の候補を挙げた。当初、ハプロタイプマッピング法による患者間のみで共有されているゲノム領域に存在する候補遺伝子を順次シークエンスする計画を立てていたが、近年の高密度アレイによる追加解析も行なった分、ゲノム構造異常の情報も加えた上で候補遺伝子を考えことが可能になった。特に疾患の特徴から脳・神経組織特異的な発現パターンを示す遺伝子を優先して調べていくアプローチを取ることで目標達成の可能性を高める。
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