単一遺伝子異常で発症する家族性パーキンソン病(familial Parkinson ' s disease ; FPD)の研究は分子レベルで黒質変性の病態を解明できる可能性があり注目されている。DJ-1遺伝子異常に起因するFPD(DJ-1-linked FPD)では、黒質神経細胞が比較的選択的に障害されていることが予想されるが、内因性DJ-1の細胞内局在ならびに脳内における機能的役割については未だ不明な点が多い。そこで、我々はDJ-1-linked FPDの病態を解明する一手として、内因性DJ-1の細胞内局在について詳細な検討を行った。まず、我々はマウス脳より単離したシナプトソームおよび小胞体画分におけるDJ-1の局在について検討を行った。その結果、DJ-1がマウスの脳神経細胞膜に局在していることを確認した。一方、小胞体はその構造からシナプス小胞と有芯小胞に大別される。興味深いことに、小胞体画分において、DJ-1は主に有芯小胞に局在を示した。次に、SH-SY5Y細胞における内因性DJ-1の局在について、共焦点顕微鏡法にて検討を行った結果、DJ-1免疫活性は細胞膜マーカーおよび分泌小胞マーカーであるRab3Aと共局在を示した。以上、本研究の結果より、マウス脳内およびSH-SY5Y細胞において、内因性DJ-1が細胞膜ならびに小胞体上に局在していることがはじめて明らかとなった。また、DJ-1が分泌小胞に局在を示したことから、DJ-1がタンパク質の細胞内輸送に関与している可能性が示唆された。現在、これらの成果について、学術論文としての発表準備を進めている。今後、細胞内輸送経路におけるDJ-1の機能的役割についてさらに詳細に検討し、DJ-1-linked FPDの発症機序について探索を行っていく。
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