研究課題
1.肝臓への遺伝子導入による、膵β細胞に対する影響の解析肥満の際に肝臓で活性化することが知られているERK経路に着目し、アデノウィルスを用いて恒常活性型MEK1をマウスの肝臓に発現させ、肝臓のERK経路を活性化したマウスにおいて、膵β細胞に対する影響を検討した。肝臓のERK経路を活性化したマウスでは糖反応性インスリン分泌が著明に亢進し耐糖能が改善した。また、このマウスではBrdU陽性の膵β細胞、膵島量、膵インスリン含量が著明に増加していた。2.神経を介した肝臓-膵島連関の解析肝臓のERK経路を活性化したマウスにおいて内臓神経求心路の薬理的遮断や膵に分布する迷走神経の切断、あるいは中脳切断を行うと、糖反応性のインスリン分泌亢進やβ細胞の増殖が阻害されたことから肝臓のERK経路の活性化が、内臓神経求心路→中枢神経→迷走神経遠心路を介して膵β細胞の増殖やインスリン分泌亢進を起こすという、肝臓-膵β細胞間連関経路が明らかになった。この経路を阻害することにより肥満モデルマウスにおける膵インスリン含量の増加を抑制されたことから、この連関経路が、生理的に肥満における膵島肥大に関与していることが明らかとなった。さらに、インスリン欠乏性糖尿病モデルマウスの肝臓のERK経路を活性化したところ、膵β細胞の増殖、膵インスリン含量の増加を認め、インスリン欠乏性の糖尿病を治療することに成功した。この結果は我々が明らかにした肝臓-膵β細胞間連関経路に介入することで、膵β細胞の再生治療につながる可能性を示すものである。
すべて 2009 2008
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) 産業財産権 (1件)
Science 322
ページ: 1250-1254
Circulation 118
ページ: 75-83