研究概要 |
1年目の検討を終えた時点で、下記の実験を遂行し、新たな知見を得ている。 (1) C57BL6マウスにhigh fat,high fructose負荷(HFFD)を行ったところ、脂質代謝異常、血圧上昇、全身のインスリン抵抗性と耐糖能低下を認め、メタボリックシンドロームの表現系を呈した。ピルビン酸負荷試験による肝でのインスリン感受性の低下を認めた。組織学的にNAFLDを呈し、また肝での遺伝子を検討したところ、糖新生酵素・脂質合成酵素・炎症の亢進を認めた。しかしながら本マウスではSREBP1cの発現上昇を伴わず、重度の脂肪肝炎肝は呈さなかった。 (2) 近年アルドステロンの血管や心筋における炎症や線維化促進について報告されているため、HFFD負荷マウスに対する抗アルドステロン剤であるスピロノラクトン(SP)投与の影響を検討したところ、SPは肝の炎症性サイトカイン産生を抑制し、糖脂質代謝を改善した。組織学的にも肝の脂肪沈着を著明に改善した。 (3) PDGFRβ^(flox/flox)変異マウスを用いたNASHモデルの作製を試みていたが、PDGFRは肝細胞には発現せず、星細胞が障害を受けるとその発現が増加した。これに対し予定したタモキシフェン、Cre発現マウスとの交配、Cre発現アデノウイルスのマウス肝への導入を試みたが、いずれも星細胞での良好な遺伝子のノックアウトを達成できなかった。アデノ随伴ウイルスを用いて星細胞での遺伝子導入を達成した報告が認められたため、現在改良Creを発現するアデノ随伴ウイルスを作製している。 (4) インスリン抵抗性を有し、さらに肝線維化を伴った重度のNAFLDやNASHのモデルとしてSREBP1cの持続活性型遺伝子導入マウスを現在繁殖中であり、来年度の研究ではこれらを用いて検討する。
|