研究課題
我々は、新規のG蛋白共役型-脂質受容体、GPR40が内因性脂質(遊離脂肪酸)をリガンドとし、インスリン分泌増強に関与することから、インスリン分泌調節と脂質代謝でのGPR40の病態生理的意義の可能性に注目し、我々が遺伝子異常を解明したレプチン受容体欠損-遺伝性肥満モデル(Nat Genet 14:130,1996)コレツキーラット(fa^k/fa^k)にて、膵島でのGPR40遺伝子発現をTaqMan PCRにて検討した。著明な肥満および早期インスリン分泌調節異常を呈する14週齢のfa^k/fa^kで、膵島でのGPR40 mRNAレベルは非肥満対照(+/+)の約113に著明に低下していた。膵β細胞領域はfa^k/fa^kにて+/+の約5倍に著明に増加していたが、膵α細胞領域は有意な差がなかったことから、このGPR40遺伝子発現の低下は膵島内でのβ細胞の比の低下によるものではないと考えられた。また、14週fa^k/fa^kの単離膵島にて、GPR40のリガンドである長鎖脂肪酸のオレイン酸によるインスリン分泌増強は、+/+の約1/3に著明に低下していた。fa^k/fa^kがレプチン受容体欠損動物であることから組織脂質蓄積が予想されため、膵島での中性脂肪レベルを定量したところ、fa^k/fa^kにて+/+の約3倍に著明に増加していた。また、GPR40のプロモータ領域に結合ドメインが報告されているPdx1のmRNAレベルは、fa^k/fa^kの膵島で+/+の約1/2に低下していたことから、膵島でのGPR40遺伝子低下にPdx1遺伝子発現低下が関与する可能性が示された。本研究により、脂質蓄積のある膵β細胞で、GPR40遺伝子発現低下が示された。GPR40はインスリン分泌調節増強に関与することが知られており、膵島でのGPR40発現低下とインスリン分泌調節異常の関連が示唆される。また、我々の検討から、コレツキーラットが脂肪蓄積と膵β細胞機能異常の研究ツールとして有用である可能性が示された。
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Proc Natl Acad Sci USA 26
ページ: 1666-1671