研究課題
これまで我々はROCK-IIの抑制がPPARγやC/EBPαの発現を著明に亢進させ、脂肪細胞分化を促進させることを明らかにしてきた。2種類のROCK阻害薬(Y-27632, fasudil)は脂肪細胞分化を促進させ、PPARγやC/EBPαの発現を著明に亢進させた。ROCK-II-/-MEFはwild typeと比較し、著明に脂質蓄積が亢進し、PPARγやC/EBPαの発現も有意に上昇した。ROCK-II siRNAを導入後、脂肪細胞分化を検討するとcontrol群と比較しPPARγやC/EBPαの発現が有意に上昇した。そのメカニズムとしてROCK-IIの阻害によるAktリン酸化の亢進が寄与すると考えられる(J.BiolChem 282 : 29574-83, 2007)。さらに骨髄由来間葉系幹細胞においてROCK阻害薬とチアゾリジン誘導体の共投与は単独投与と比較し、脂肪細胞分化を促進させた。またROCK阻害薬により脂肪細胞分化を負に調節する転写共役因子の発現が低下することを見出した。ROCK阻害薬は主にインスリンシグナルの亢進とPPARγの発現増強作用を併せ持つことから糖尿病治療薬としての可能性が期待できる。ROCK-IIのin vivoにおける肥満、糖代謝に対する意義についての解析では標準食でROCK-IIヘテロノックアウトマウスの体重、血糖値、糖負荷試験に関して野生型と有意な差は認めなかった。高脂肪食負荷においても体重、血糖値、糖負荷試験において有意な差は認めなかった。表現型で顕著な差を認めないためにヘテロノックアウトマウスのインスリン標的臓器での遺伝子発現解析の解析が必要と考えられる。糖代謝におけるROCKの意義を検証するためには今後、組織特異的ノックアウトマウスの作製と糖代謝等に関する解析が必要となる。
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FEBS Lett. 583
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Metabolism