骨格筋におけるインスリン抵抗性は、2型糖尿病において最も早期に現れる病態の一つであることから、その作用機序を解明することは重要な研究課題といえる。近年、アクチンフィラメント結合タンパクの一つであるフィラミンが、インスリン受容体と結合することや、骨格筋においてAktによってリン酸化されることが報告されている。しかし、インスリン情報伝達経路を介した糖脂質代謝に対するフィラミンの関与については明らかとなっていない。そこで、骨格筋の糖脂質代謝に対してフィラミンが何らかの関与をもつ可能性について検討した。筋繊維芽細胞の筋管細胞への分化誘導によって、フィラミンの発現量は増加していた。また、マウスの各種組織においてフィラミンの発現量は、ひらめ筋(赤筋)において強く、長指伸筋(白筋)において弱かった。さらに、2型糖尿病マウスのひらめ筋におけるフィラミンの発現量は、対照マウスと比べて増加していた。筋管細胞株に対してインスリンやグルコースなどの糖脂質代謝制御因子を投与してもフィラミンの発現量に変化はなかった。また、マウスに対して絶食再摂食処置、インスリンやグルコースの投与をおこなっても、骨格筋におけるフィラミンの発現量に変化はなかった。白筋に比べて糖脂質代謝に重要に関与する赤筋においてフィラミンの発現量が高いこと、糖尿病マウスの赤筋においてフィラミンの発現量が増加していることから、フィラミンが赤筋特有な糖脂質代謝機能に何らかの影響を与えている可能性が考えられる。今後、フィラミンの発現を調節する因子についてさらに検討し、フィラミンと糖脂質代謝の関係について解析する必要があると考えられる。
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