【目的】NO合成酵素内因性阻害物質ADMA(asymmetrical dimethylarginine)は、重要な心血管病危険因子の一つである。ADMAは高血圧・賢不全に加え、メタボリックシンドロームの各病態、肥満・インスリン抵抗性・糖尿病・高脂血症で上昇する。ADMAの代謝酵素DDAH(dimethylarginine dimethylaminohydrolase)にはDDAH1、2が存在する。我々は以前DDAH2全身過剰発現マウス(以下TG群)の冠動脈硬化抑制作用を報告した。(Circulation Research2007)今回我々は、DDAH2のインスリン抵抗性病態下での影響について検討した。 【方法】TG群と野生型(WT群)を通常食・高脂肪食給餌下で飼育後、体重、IGTT(腹腔内ブドウ糖負荷テスト)、IITT(腹腔内インスリン負荷テスト)、採血データ(血糖・インスリン値・脂質値等)、脂肪組織(BAT・WAT)、CTによる脂肪(皮下・内臓)、測定を検討した。更に、膵臓・膵島を単離後に組織所見・インスリン含量・グルコース刺激インスリン分泌(GSIS)を検討した。 【結果】通常食給餌下では両群に有意な差を認めなかった。高脂肪食給餌下では、TG群はWT群に比し空腹時血糖値低値、IGTT上糖負荷後60分・120分後の血糖低値、15分・30分後でインスリン分泌亢進を認めた。IITT、体重、血中脂質値、脂肪組織、高脂肪食による膵島過形成(B細胞増加)については差を認めず、TG群膵島のGSIS亢進を認めた。 【考察】DDAH2過剰発現は膵島B細胞のインスリン分泌能を亢進し、高脂肪食負荷時の血糖低下を生じた。以上より、DDAH2はメタボリックシンドローム等で見られるインスリン分泌障害に対する治療ターゲットとなると考えられた。
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