NO合成酵素(NOS)の内因性阻害物質としてADMA (asymmetrical dimethylarginine)が存在する。ADMAの代謝酵素DDAH(dimethylarginine dimethylaminohydrolase)には2つのアイソフォームDDAH1、2が存在する。これまでにDDAH2のin vitro (ATVB.2006)の新規作用、in vivo (Circ Res.2007)の新規作用を報告したが、今回はDDAH2全身過剰発現マウスに糖尿病発症モデルの高脂肪食・streptozotocinの同時投与を行ない、DDAH2の生体におげる糖尿病発症抑制効果を検討した。 血中ADMAは糖尿病患者で高値であり、その機序は高血糖による酸化ストレスがDDAH酵素活性部位をS-ニトロソ化し、活性低下させる事が示唆されている。逆に、DDAH2過剰発現マウスは、ADMAを代謝し局所活性酸素低下作用を有するが、膵局所でも局所酸化ストレスの低下を認めるかを検討したところ、膵局所酸化ストレスの低下を認めた。また、WT(コントロール)マウスに高脂肪食を給餌し、膵島を単離し解析したところ、膵局所のADMAが上昇し、DDAH2過剰発現マウスにおいては膵臓膵局所ADMAの低下を認め、膵臓局所NOの産生亢進をもたらした。 膵局所NO産生亢進と膵局所の酸化ストレスの低下により、DDAH2過剰発現マウスは糖尿病発症時の膵インスリン分泌亢進を認めた。
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