1) TRα1とp85αとの細胞内での相互作用の検討 : HEK293細胞にpcDNA/His-TRα1プラズミドを導入し、His-tag TRα1蛋白を発現させました。24時間後にT3で5分間細胞を処理し、細胞内蛋白を抽出したのち共免疫沈澱を行いました。T3非存在下にはTRα1とp85αとの結合を認められなかったが、T3処理5分後に両者の結合を観察された。一方、我々はin vitroで精製されたTRα1とp85αをインキュベートし、T3非存在下でも両者の結合を観察された。以上の結果からin vivoで第三者蛋白の参与を強く示唆された。それで、Srcの参与可能性を検討した。上述のように共免疫沈澱の後、Src抗体を用い、T3存在下で、TRα1とp85αの複合体にSrcも検出された。また、T3非存在下では、複合体が形成できませんでした。以上の結果より、T3はPI3Kを活性化するにはTRα1/p85α/Src複合体の形成が必要であることを明らかにした。2)Srcを介するT3依存的なPI3K活性化する機序の検討 : まず、TRα1が恒常発現するN2aTRα1細胞で、T3によるSrc活性の調節を検討した。T3の添加によって、Srcの活性化に必需であるtyrosine 416が短時間に(5分からで、20分ピークに)リン酸化された。次に、Src阻害剤PP1とSrc siRNAを用いて実験を行いました。両者ともSrcの活性だけではなくて、PI3K-Aktの活性も阻害した。さらに、抗p85α抗体で免疫沈澱したあと、リン酸化tyrosine抗体を用い、p85αのリン酸化を検討した。T3はp85αのtyrosineをリン酸化し、そのリン酸化はSrc阻害剤により遮断された。 以上の結果はT3がTRα1/p85α/Src複合体の形成を促進し、この複合体の形成によりSrc→p85αの順番で一連のリン酸化を起こって、シグナル伝達を促進することを明らかにした。
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