1) 神経細胞の生存に対するT3ノンゲノミック作用に関する研究:マウス胎児(E18)由来の大脳皮質スライスをT3を含まない培養液に1日培養し、T3添加後30分と1日に、蛋白を抽出し、Western Blotting法でAkt(Ser473)、Src(Tyr416)、Bad(Ser126)のリン酸化を検討した。これらの蛋白はT3添加後30分でリン酸化が認められることから、T3のノンゲノミック作用が関与していることを示唆された。同時に、培養したスライスをNeuN、caspase3 (Asp175)に対する抗体や蛍光Nissl染色(Neuro-Trace)を用いて組織染色を行った。caspase3 (Asp175)はアポトーシスのマーカー、NeuNとNeuro-Traceは神経細胞のマーカーとして使われた。その結果、T3非存在下でアポトーシスの神経細胞が著明に増加した。更に、マウス大脳より調製した初代神経細胞培養を用いた実験も行いました。上述のように、Akt、SrcとBadが短時間でリン酸化された。また、神経細胞のviabilityやアポトーシスをフローサイトメトリやTUNEL法を用いて検討すると、T3の添加により、神経細胞のアポトーシスが抑えられた。以上の研究より、神経細胞の生存に対するT3のノンゲノミック作用を示唆された。2) T3ノンゲノミック作用の分子基盤に関する研究:T3が細胞内Ca上昇を介してAMPKを活性化することが示されたが、この作用にTRが必要か否か不明である。そこで、Neuro2a細胞にTRα1やTRβ1を構成的に発現させた細胞株N2aTRαやN2aTRβを用いて、TRの発現が細胞内Ca動員を促進するか否かを検討した。細胞内Caの変動は蛍光Ca指示薬Fluo-3を用いて測定した。T3がTRを発現している細胞だけに細胞内Caを増加することが証明された。また、TRα1やTRβ1の発現をsiRNAで抑制されると、T3によるCaの増加を認められなかった。TRを介して、細胞内Caの調節の詳細の分子機序は更なるの実験が必要だと考えられる。
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