研究概要 |
ヒト甲状腺初代培養細胞から、ある特殊な培地(無血清、種々の成長因子を含む)を用い、大部分の分化した細胞は増殖出来ないかアポトーシスを起こしてしまうものの、ごく一部分の細胞だけを増殖させる事が出来る系を確立した。この培地を用いると、初代養甲腺細胞10, 000個あたり約50〜70個のコロニーを形成する事が出来る細胞を増殖、単離する事が出来る, この細胞集団は、甲状腺の分化したマーカーであるサイログロブリンの発現等は見られず、未分化な状態の幹細胞、もしくはそれに近い細胞である事が予想された。これらの細胞のside population分画の存在を調べたが、明らかなside populatioh分画は確認されなかった。これらの細胞はまた、上皮系のマーカーであるサイトケラチンの発現も陰性であるため、これらの細胞が甲状腺組織に存在した間葉系幹細胞である可能性を考え、間葉系細胞のマーカーで染色したが、これも陰性であった。次に、これらの細胞を血清とTSH存在下で培養し、甲状腺細胞への分化を試みた。約1ヶ月間の刺激で、細胞はサイトケラチンとサイログロブリンを発現する様になり、確かに甲状腺細胞へ今化していると考えられた。この事から、増殖してきた細胞集団は、甲状腺濾胞細胞への分化能を持つ、幹細胞もしくはそれに近い細胞集団である事が示唆された。今後、この細胞の性質、機能を分化した甲状腺濾胞細胞と比較しつつ、より詳細に検討していく予定である。
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