アルドステロン値正常下でMR活性化を引き起こす因子を探索・同定し、その因子を中心にMRタンパク修飾を介したMR活性化と生体における臓器障害への関与の解明を行うこととし、MR活性化因子のスクリーニングとしては、インスリン、IGF-1、TNF-α、IL-1β、EGFなどを用いて検討を行った。するとEGFは、MRのmRNA量は変化させずにMRタンパク発現量を増加させ、またMR転写活性の増強作用が、レポーターアッセイに加え内因性MR標的遺伝子(SGK)に対する作用でも確認された。EGFのMRタンパク発現量増加作用が、MR遺伝子の転写の発現亢進によるものなのかを検討するために、定量的PCR法を用いてMRのmRNA量確認したところ、EGFはMRのmRNA量に影響を与えなかった。一方で、ユビキチンプロテオソーム系の阻害剤MG132を使用した実験から、EGFによるMRタンパク量の増加作用はユビキチン-プロテオソーム系によるMRタンパク分解の抑制であることが判明した。さらに、EGFRのRNAiや、EGFR下流シグナルの阻害剤を用いた研究により、EGFはその下流のMAK kinase経路を介して、MRの分解を抑制し、MRの転写を増強していることが明らかとなった。生体における臓器障害との関与については、EGF作用は未解明な部分が多い。興味深いことに、MR作用でEGFR発現が上昇するという報告はあり、MRとEGFR間で局所的に負の連鎖サイクルを作り、高血圧症や臓器障害の増悪因子である可能性が示唆される。
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