研究課題
本研究では、既存の抗がん剤では治癒が困難な難治性造血器腫瘍のモデルを確立し、そのモデルを駆使して新たな分子標的療法の開発につなげることを目的としている。今回は、難治性白血病で高頻度に活性化されている転写因子Evi-1に着目し、Evi-1をマウス骨髄細胞に導入することにより半固形培地上で長期間の培養を可能とする実験系(colony replating assay)の確立を試みた。通常の骨髄細胞は培養を続けるうちに分化してコロニー形成能を失うのに対し、Evi-1を導入した骨髄細胞は半永久的なコロニーを形成能を獲得した。これは難治性で知られるEvi-1高発現白血病の病態をin vitroで再現したアッセイ系と考えられ、治療標的の探索などに極めて有用であると考えられる。次に、やはり難治性白血病との関連が知られているMLL転座型融合遺伝子がEvi-1を直接活性化することを発見した。このMLLによるEvi-1の活性化は造血幹細胞では顕著であるが、分化した骨髄前駆細胞では軽度であり、白血病細胞の起源により特定の転写プログラムが活性化されることも明らかとなった。また、Evi-1の下流標的遺伝子として造血系転写因子Pbxl、Evi-1と結合して転写制御に関わる因子として複数のヒスンメチル化酵素(SUV39H1, Gga)を同定した。さらに、前述のcolony replating assayとshRNAを用いた遺伝子発現抑制法を組み合わせ、Pbx1やヒストンメチル化酵素の発現抑制によりEvi-1高発現骨髄細胞のコロニー形成能が低下することを見出した。これらの結果は、難治性白血病に対する新規分子標的療法開発のための基盤となる貴重な成果と考えられる。
すべて 2008
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BioClinica 23(12)
ページ: 19-25
Cell Stem. Cell 3(2)
ページ: 207-220