研究課題
本研究では、難治性白血病遺伝子Evi-1を導入した骨髄細胞を半固形培地上で培養する実験系(colony replating assay)を用いて、Evi-1により活性化されるシグナル伝達経路について解析した。通常の骨髄細胞は培養を続けるうちに分化してコロニー形成能を失うのに対し、Evi-1を導入した骨髄細胞は半永久的なコロニー形成能を獲得する。Bvi-1高発現細胞ではAkt/mTor経路が活性化されており、またラバマイシンなどのAkt/mTor経路阻害剤を添加することにより、そのコロニー形成能が低下した。次に、Evi-1がAkt/mTor経路を活性化する分子機構について解析を進め、Evi-1がPtenの発現抑制を介してこの経路を活性化することを見出した。Evi-1によるPtenの発現抑制には、Evi-1とポリコーム複合体との結合が重要な役割を果たしており、shRNAの手法を用いてEZH2などのポリコーム複合体をノックダウンすることによっても、Evi-1高発現細胞のコロニー形成能が低下した。さらに、Evi-1を導入した骨髄細胞をレシピエントマウスに移植し、白血病のモデルマウスを作製した。Evi-1導入骨髄細胞を移植したマウスは、半年以上の潜時を経て白血病を発症した。発症したマウスから白血病細胞を採取し、ラパマイシンもしくはコントロールとともに2次移植したところ、ラパマイシン投与下では白血病発症が有意に遅延した。これらの実験系は、難治性で知られるEvi-1高発現白血病の病態をin vitroおよびin vivoで再現したアッセイ系と考えられ、今後の研究に極めて有用である。また、Akt/mTor経路やポリコーム複合体は、Evi-1関連白血病に対する有望な治療標的になり得ると考えられる。
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