1. 巨核球におけるCLEC-2の役割とCLEC-2信号伝達系におけるCARD9の役割 CLEC-2欠損マウス作成に成功したが、ヘテロマウスは胎生致死に準じた状態であると思われた。このため、platelet factor 4 (PF4)発現細胞でのみCLEC-2が欠損するように設計したCLEC-2コンディショナルノックアウトマウス(PF4-Creマウス)も作成した。PF4-Creマウスも胎生期の死亡が多く誕生数が少なく、当初予定していた骨髄巨核球の採取・培養実験はさらに工夫が必要であった。そこでCLEC-2欠損マウス胎仔の肝細胞をdonorとし、放射線照射により骨髄を破壊したrecipientマウスに移植したキメラマウスを作成し、CLEC-2欠損血小板を得る方法をとることとした。現在キメラマウスを作製しCLEC-2欠損血小板を用いた血栓止血機能解析を先行して行っており、今後骨髄巨核球の採取・培養実験に着手する予定である。 2. CLEC-2血小板信号伝達系におけるCARD9の役割 ロドサイチン、コラーゲン、トロンビン、ADP刺激により惹起される血小板凝集を再度検討したが、いずれのアゴニストにおいてもCARD9蛋白のADP有無にかかわらず同等レベルの凝集反応を認めた。CLEC-2を介した血小板活性化・凝集反応においてはCARD9蛋白は重要な役割は担っていないものと考えられる。しかし巨核球分化・血小板産生におけるCLEC-2とCARD9の関与を否定するものではなく、今後巨核球を用いた実験に取り掛かる予定である。
|