B細胞リンパ腫の染色体転座関連遺伝子の一つであるBCL2をCD19プロモータ下に発現するレンチウィルスベクターをマウスの骨髄幹細胞に導入後マウスに移植し、一部のB細胞でBCL2が高発現するキメラマウスを作製した。後日レシピエントマウスの脾臓よりジンパ球を回収し、その転座模倣B細胞の表面形質を解析した。BCL2遺伝子導入B細胞は、mockベクターを導入した群に比べ辺縁帯B細胞への分化が抑制され、濾胞B細胞への分化指向性を持つことが示された。また、抗アポトーシス作用を保持したBCL2 Y28Fのmutant導入群でも同様の性質が示されたが、抗アポトーシス作用を欠失させたBCL2G142Aのmutantを導入したB細胞では分化は正常であり、BCL2の分化指向性はその抗アポトーシス作用が関与することが示された。さらに、BCL2導入B細胞ではTNP-Ficollへの反応性も減弱していたことから、機能的に、も辺縁帯B細胞の減少が確認された。またB細胞でBCL2が高発現しているEμ-BCL2トランスジェニックマウス由来のB細胞はin vitro刺激下での形質細胞への分化が抑制される傾向にあったことより、BCL2転座陽性B細胞は辺縁帯B細胞への分化抑制や終末分化の抑制といつた独特の分化指向性を有し、これが特定の分化段階のB細胞を起源とするリンパ腫の発症に関与する可能性が考えられた。本内容は平成20年度に開催された複数の学会で報告し、現在論文を投稿中である。現在我々は引き続き、同実験系で、CyclinD1をマウス生体内B細胞に導入する実験を開始している。
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