研究概要 |
我々はt(14 ; 18)(q32 ; q21)の稀なvariantであるt(18 ; 22)(q21 ; q11)を有する濾胞型リンパ腫からびまん性大細胞型リンパ腫へ移行した症例において、今まで報告のない新規癌抑制遺伝子TFLを見出した(Br. J. Hematol. 139 : 161,2007)。TFLの欠失が悪性リンパ腫の発症や悪性化の進展に際しての重要な要因と考え、潜在的なTFLの欠失を調査すべく臨床研究によりリンパ系悪性腫瘍の骨髄・リンパ節検体を用いて2カラーFISHを行ったところ、さまざまな病型の患者にTFLの欠失を認めた。さらに、我々はTFLには二つのスプライスバリアントTFL1, TFL2が存在し、TFL1より合成される58KDaの蛋白質、p58^<TFL>がリンパ球特異的なアイソフォームであることを明らかとした。また、多くのリンパ系白血病細胞株にp58^<TFL>の発現を認めたがいくつかのTリンパ系白血病細胞株にはp58^<TFL>の発現を認めなかった。TFLの分子的機能を明らかにするため、我々はTFLを持たないTリンパ系白血病細胞株にTFLを遺伝子導入した。その結果、Rbのリン酸化を抑制することで細胞増殖を抑え、アポトーシスを誘導することを明らかにした。このことにより、TFLが新規のがん抑制遺伝子であることが示唆された。次に、p58^<TFL>は強制発現により細胞質のP-bodyと呼ばれる顆粒に局在し内在性のStress granuleと空間的に協調していることが明らかとなった。P-bodyはAGO2などマイクロRNAの制御に関わる分子の集合体として知られており、p58^<TFL>は転写後調節に関わる新しい分子であることが予想される(Mol Cancer Res. In press)。
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