濾胞型リンパ腫からびまん性リンパ腫へと悪性度が進展する際に新たに加わったt(2 ; 6)転座症例より、tumor suppressor TFL(p58とp36)を同定した。TFLは第6番染色体のZC3H12Dにコードされ、C3H型Zn-fingerモチーフを有する。ZC3H12Dは悪性リンパ腫の18%に欠失が確認でき、そのSNPと肺がん発症の関連も報告されている。TFL蛋白は【1】リンパ組織にドミナントに発現し、【2】Rb蛋白のリン酸化抑制を介し細胞周期のG1からS期への進行を阻害する。TFLを欠失するヒト白血病細胞株に蛋白発現させると【3】白血病の細胞増殖が抑制され、【4】アポトーシスが誘導される。すなわち、ヒト白血病において「がん抑制遺伝子」として機能しうる。さらにこれらの生物学的機能はZn-fingerモチーフを欠損させることで失われた。p58^<TFL>は、細胞質顆粒のp-bodyにEIF2C2(AGO2)やDCP1a等と共存し、TIA-1などのStress granuleと空間的に近接することから、炎症などのストレスに応答して標的となるmRNA/miRNAの転写後調節を行い、細胞増殖を阻害すると考えられる。C3H型Zn-fingerモチーフを有するRNA結合蛋白Tristetraproline (TTP)やRoquinがそれぞれTNFαやICOSのmRNA3'UTRを標的とする、免疫調節分子として注目されているが、マウスファミリー遺伝子Zc3h12aが新規RNaseとしてマクロファージの活性抑制に関与していることが報告された。TFLも同様のRNase motifを有し、リンパ球に高発現することから、私たちが作成したZc3h12dKOマウスは多段階発がんのみならず、炎症性疾患のモデルマウスとしても有用であると考えている。
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