多発性骨髄腫は、難治性の血液疾患であり、治癒に向けては、患者層別化や新たな分子標的の同定が必要と考えられる。我々は、これまで、NF-kBやPU.1などの転写因子が、分子標的、患者層別化に寄与する可能性を示してきた。今回、PU.1にMUM1(Multiple Myeloma Oncogene 1 or IRF4)を加えることにより、さらに患者層別化を行い、また、多発性骨髄腫におけるPU.1とMUM1の発現の意義を明らかにすることを目的とした。CD138ビーズで純化した骨髄腫細胞において、(1)PU.1 low IRF4 low、(2)Pu.1 low IRF4 high、(3)Pu.1 high IRF4 high、(4)Pu.1 high IRF4 highの4群に分けて、予後の解析を行った。予後は、それぞれの群で有意差はないものの、Pu.1 low IRF4 highの群が予後不良な傾向にあった。また、テトラサイクリンオフのシステムを利用してPU.1を発現させた骨髄腫細胞株U266細胞にさらにIRF4を発現させたところ、IRF4は細胞増殖に影響をもたらさなかったことから、我々の実験系では、IRF4の細胞増殖作用は、PU.1の増殖抑制作用に勝ることはないと考えられた。また、PU.1結合部位のあるTRAIL promoter領域のプローブを用いたゲルシフトアッセイを行ったが、その結果にて骨髄腫細胞株において報告されているようなPU.1とIRF4が協調して働いていることは示唆されなかった。今後は、PU.1、IRF4の発現による予後の有意差を確認するために、さらに症例を蓄積し、解析する予定としている。
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