1. インターフェロン(IFN)αによる抗腫瘍効果のシグナル伝達機構の解明 IFNαによる抗腫瘍作用のシグナル伝達経路はTyk2依存性であるが、その下流は不明である。私は、アポトーシス誘導蛋白であるSiva-1が、細胞内でTyk2と会合することを見出した。会合部位はSiva-1のN末であった。また、Tyk2によりSiva-1の53番と162番のチロシンがリン酸化されることを明らかにした。細胞を直接IFNαで刺激したときにSiva-1のリン酸化が生じるかどうかは、現在確認中である。次に、Tyk2とSiva-1の相互作用が細胞増殖抑制作用にどのような機能的役割をもつかを検討した。マウスのproB細胞であるBaF3細胞を用いて、野生型Tyk2を恒常的発現させた細胞(BaF3/Tyk2WT)にSiva-1を導入したところ、通常のBaF3細胞(BaF3/parent)にSiva-1を導入した場合と較べて生じるアポトーシスの割合が約2倍に増加した。Tyk2との会合部位(N末)を削除した変異Siva-1をBaF3/Tyk2細胞に導入してもアポトーシスの割合は増加しないことから、Siva-1がTyk2と会合することによってSiva-1のアポトーシス誘導能が亢進すると考えられた。現在この現象を生体内で確認する目的で、野生型マウス由来の細胞およびTyk2欠損マウス由来の細胞それぞれにSiva-1を導入し、生じるアポトーシスの割合を比較する実験を行っている。 2. 14番染色体転座を有する悪性リンパ腫の発症・病態にSiva-1が関与しているか Siva-1遺伝子は第14番染色体上に位置することから、第14番染色体転座をもつ悪性リンパ腫の発症にSiva-1が関与する可能性を考えた。インフォームドコンセントを得た症例を収集した。腫瘍細胞より蛋白を抽出し、Siva-1の発現量を正常細胞と比較する実験を現在行っている。
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