研究概要 |
G-CSFを併用することにより、抗CCR4抗体の抗腫瘍効果が有意に増強することを、ArLL/SCIDマウスモデルで示した。そしてその作用機序はG-CSFによるマウスマクロファージの貪食能亢進であることを示した。エフェクター細胞の機能を亢進させる薬剤は抗CCR4抗体の併用薬として有望であることを証明した(Br J Haematol)。抗CCR4抗体の主たる作用機序はADCCである。現在臨床現場で不可欠の薬剤であるリツキシマブを用いてADCCの作用機序を詳細に検討した。結果、ADCCの感受性規定因子として、リンパ腫細胞発現するNKG2DのリガンドであるULBPが重要であることを明らかにした。この事実は、ULBPの発現を増強させる薬剤との併用により、抗CCR4抗体など治療抗体のADCC誘導能を増強可能であることを意味する(lnt J Cancer)。また、骨髄腫に対し臨床で高い効果を示しているボルテゾミブが、T細胞性リンパ腫に対しても有望であることを明らかにした(Cancer Sci)。今後は抗CCR4抗体との併用実験を推し進めていく予定である。ヒト体内でのADCCはヒト免疫担当細胞をエフェクターとしておこるが、マウス体内においてはマウス免疫担当細胞をエフェクターとしておこる。故に、抗CCR4抗体を含む免疫療法のマウスin vivoでの抗腫瘍効果が、そのままヒトでの抗腫瘍効果を直接的に反映しないのが、これまでの限界であった。その壁を乗り越えるため、NoD/Shi-scid, IL-2Rγ^<null>(NOG)マウスを使用した。NOGマウスは、NOD-scidなどの免疫不全マウスと比較して、多様なヒト細胞が分化、増殖することが可能である。NOGマウスにヒト免疫担当細胞を生着させ、マウスin vivoでヒトエフェクター細胞による、抗CCR4抗体のADCCを確認しえた(Cancer Immunol Immunother)。本系は免疫療法のモデルマウスとして有用である。
|