慢性骨髄性白血病モデルマウスであるp210 BCR/ABLトランスジェニックマウスと、VEGFレセプターの1つであるVEGFR1の細胞内チロシンキナーゼドメインを欠失したVEGFR1 TKノックアウトマウスを掛け合わせ、p210 BCR/ABLトランスジェニック/VEGFR1 TKノックアウトマウスの表現型の解析を行った。その結果、生後約6ヶ月過ぎから末梢血におけるヘモグロビン濃度の減少が見られ、さらに白血球における顆粒球系細胞の割合の増加が観察された。これらの表現型はp210 BCR/ABLトランスジェニックマウスにおいて慢性骨髄性白血病様症状として報告されていることから、VEGFR1の細胞内チロシンキナーゼ活性を持たないマウスでも、BCR/ABLによる慢性骨髄性白血病様症状が引き起こされることが明らかになった。しかし、これらの症状の発症の時期にはマウスの個体により大きなばらつきが見られ、VEGFR1の細胞内チロシンキナーゼ活性の有無が慢性骨髄性白血病様症状の発症時期に影響を及ぼすかどうかを明らかにするためには、さらに個体数を増やして解析を行う必要があると考えられる。また現在、VEGFR1の細胞内チロシンキナーゼドメインのみではなく、膜貫通ドメインまで欠失したVEGFR1 TM-TKノックアウトマウスとp210 BCR/ABLトランスジェニックマウスの掛け合わせも進めており、これらのマウスの表現型を解析することにより、VEGFR1の慢性骨髄性白血病における関与について明らかにすることができると考えられる。
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