研究概要 |
転写因子PU. 1は造血幹細胞から各種血液細胞への分化進行決定に重要な役割を果たしている。PU. 1の標的遺伝子の遺伝子発現調節機構はPU. 1と他の転写因子・転写共役因子とのクロストークおよびPU. 1自身の修飾により制御されている。これまでにPU. 1は血球分化過程において、コアクティベーター(Cbp/p300, Moz)やコリプレッサー(mSin3A-Hdac)との複合体形成が変化しその複合体形成には自身のアセチル化とリン酸化修飾が関与している実験結果を得ている。しかし、PU. 1タンパク質中の被アセチル化・被リン酸化部位の解析については不明な点が多く残されている。本研究では以下の解析を行いさらに詳細なPU. 1による転写調節機構の選択性について解明を目指し以下の研究を行った。 1-1)PU. 1の修飾状態と転写共役因子との結合による転写調節の相関性 PU. 1のETSドメインに存在する12箇所の被アセチル化とPESTドメインに存在する6箇所のリン酸化部位の修飾状態と転写共役因子群との結合の嗜好性変化の相関性を明らかにするためPU. 1の被修飾部位と推測される箇所にそれぞれ置換変異を導入した変異体を作製し、Cbp/p300もしくはmSin3A-HDAC1複合体との結合の強さをpulldown法、two-hybrid法を用いて解析を行った。その結果、PU. 1の208a. a. に存在するリジン残基がCBPとの結合に、206, 244-249a. a. のリジン残基と132/133a. a. のセリン残基がmSin3Aへの結合に必須であり、また、45a. a. のセリン残基はCbp, mSin3A両者の結合に必須の部位であることが明らかとなった。 1-2)PU. 1により「正」・「負」に調節される標的遺伝子とPU. 1の被修飾状態との関連性 PU. 1は造血幹細胞から単球・マクロファージ系細胞への分化に必要なGM-CSFR遺伝子やリンパ球系細胞への分化に必要なIL-7a遺伝子の昂進に重要な役割を果たしている。このPU. 置換を導入したPU. 1置換変異体を用いて解析を行った。その結果、上記208, 244a. a. のリジン残基のアセチル化と132, 133a. a. に存在するセリン残基のリン酸化が標的遺伝子の発現昂進に、245-249a. a. のリジン残基のアセチル化と45a. a. のリン酸化が転写抑制に寄与していることを明らかとした。さらに、208a. a. のリジン残基がPU. 1のDNA結合能に寄与していることを明らかとした。
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