【ADAMTS13変異マウスの高ずり応力下血小板血栓形成能の解析】ADAMTS13は血小板接着蛋白質VWFの断片化を担う血漿プロテアーゼである。我々はADAMTS13研究におけるモデル動物として、ADAMTS13完全欠損マウス、C末端ドメイン欠損マウスを樹立した。本年度は、平行板型フローチャンバー法(in vitro実験系)および生体顕微鏡観察法(in vivo実験系)を用いて、ADAMTS13変異マウスの高ずり応力下血小板血栓形成能を解析した。ADAMTS13完全欠損マウスでは、ずり速度1000s^<-1>および5000s<-1>で測定したin vitro血栓形成がいずれも野生型マウスに比べて顕著に亢進しており、in vivo細動脈傷害部位での血栓の初形成および血栓による血管閉塞も短時間で見られた。一方、C末端欠損マウスの1000s<-1>でのin vitro血栓形成は正常であり、in vivoで血栓が形成されるまでの時間も野生型マウスと同等であった。しかし、このマウスでは5000s<-1>でのin vitro血栓形成が亢進しこin vivoでの血栓成長も加速して、血栓による血管閉塞は野生型マウスより短時間で認められた。以上より、ADAMTS13欠損は過剰血栓形成傾向をもたらすこと、C末端ドメインは高ずり応力下血小板血栓形成を効率よく抑制するために必須となることが明らかとなった。【脳虚血再灌流障害におけるADAMTS13の病態生理学的意義の解析】ADAMTS13欠損マウスおよび野生型マウスの中大脳動脈を閉塞し、再灌流障害の影響を比較した。ADAMTS13欠損マウスでは、再灌流後の脳血流量低下、脳梗塞拡大および血中の炎症マーカーであるHMGB1上昇が、いずれも野生型マウスに比して顕著に認められた。ADAMTS13は脳虚血再灌流後の微小循環障害に保護的に作用していると考えられる。
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