1997年4月から2009年1月までに札幌医科大学附属病院を受診したミクリッツ病40例を対象にした。ミクリッツ病の診断は、日本シェーグレン症候群研究会(2008)において採択された、IgG4関連ミクリッツ病の基準、1)涙腺・耳下腺・顎下腺の持続性(3か月以上)、対称性に2組以上の腫脹を認める、2)血清学的に高IgG4血症(135mg/dl以上)を認める、3)涙腺・唾液腺組織に著明なIgG4陽性形質細胞浸潤(強拡大5視野でIgG4陽性細胞がIgG陽性細胞の50%以上)を認める。項目1)及び2)または3)を満たすものとした。 ミクリッツ病40例と原発性シェーグレン症候群20例の治療前血清に関して、上記の方法で免疫複合体を抽出し、プロテオミクス解析を行った結果、様々なピーク(自己抗原候補のタンパク質)が認められたが、検出されるピークの高さの累積(発現量)において、両疾患群で最も有意差を認めた11.3kDaのタンパク質を見出した。 次に、治療開始2か月後の血清を得ることができたミクリッツ病24例をあわせて、この11.3kDaのタンパク質の発現量を比較した結果、治療に入った群では、その発現量が低くなった。 ミクリッツ病は、従来、原発性シェーグレン症候群に包括されていたが、今回の検討により、ミクリッツ病の全症例(図には紙面上、その一部を示した)で赤矢印のタンパク質を認め、一方、シェーグレン症候群では認められなかった。現時点では、まだそのタンパク質の同定はできていないが、この11.3kDaのタンパク質はミクリッツ病において疾患特異的自己抗体になる可能性が示唆される。 またステロイド治療開始2か月後の血清中には、このタンパク質の発現量は低下していた。すなわち抗体抗原反応で捕捉されるタンパク量が低下、抗体量が低下した可能性が示唆される。
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